Jeff Beck／『Wired』

前作『Blow By Blow』の成功から間髪を明けず、翌1976年にリリースされた再び全編インストルメンタル曲のアルバムが『Wired』だった。『Blow By Blow』が全米チャートで最高4位だったのに対し、この『Wired』は最高16位止まりだったが、セールス面ではともにプラティナ・ディスクに輝いた。

『Wired』ではプロデューサーに再び George Martin を起用し、第2期 Jeff Beck Group の盟友 Max Middleton も全8曲中6曲にキーボードで参加。さらにこの『Wired』では、新たな人脈からふたりの重要なミュージシャンが参加していた。

1970年代序盤にニューヨークで結成されたジャズ・ロックなスタイルの Mahavishnu Orchestra のオリジナル・メンバー Jan Hammer が『Wired』では『Blue Wind』にライターとしてクレジットされ、『Blue Wind』を含む4曲でボーカリストのようなプレイで Jeff Beck のギターと絡んでいた。

Mahavishnu Orchestra からはもうひとり、ドラマーの Narada Michael Walden がこのアルバムに参加し、『Come Dancing』を含む全5曲でライターとしても貢献。1976年当時の LP でB面の『Blue Wind』以降の4曲は全てこのふたり、Jan Hammer と Narada Michael Walden が書いた曲で占められていた。

Jan Hammer は自らが書いた『Blue Wind』ではドラムも叩き、一方の Narada Michael Walden もまた、本職のドラム以外にやはり自身の曲『Love Is Green』ではピアノを弾き、この2分半の短い曲では Jeff Beck のギターと同じくらいの存在感を放っていた。

プロデューサーの George Martin からの繋がりだろうか。『Wired』には The Beatles の後期のアルバムでエンジニアを務めた Geoff Emerick がミキシングを担当していた。

2作続けての全編インストルメンタル・アルバムとなったが、この『Wired』ではまるでボーカリストのような存在で Jan Hammer が Jeff Beck のギターと絡み、その様子はまるで第一期 Jeff Beck Group の Rod Stewart と同じくらいの存在感だった。

ドラマーの Narada Michael Walden も第2期 Jeff Beck Group の Cozy Powell や、Beck, Bogert & Appice 時代の Carmine Appice と同じくらいか、曲を作る面での貢献度からすれば、このふたり以上の役割を『Wired』というアルバムで演じていた。

そんな強烈な個性を持ったふたりが参加した『Wired』だが、その中にあっても Jeff Beck という存在は埋もれることなく、前作『Blow By Blow』がジャズにクロスオーバーしたアルバムだったが、『Wired』はもう少しロックなスタイルに近いアルバムへとなっていた。

『Wired』リリース後のツアーでは Jan Hammer のグループとツアーも行い、その模様は翌1977年にタイトルもそのまま、『Jeff Beck with the Jan Hammer Group Live』というかたちでリリースされ、さらに1980年のスタジオ・アルバム『There And Back』まで Jan Hammer との関係は続いた。

Narada Michael Walden とは『Wired』の他にスタジオ・アルバムを作ることはなかったが、ごく最近のツアーでは久々に Jeff Beck と共演し、その健在ぶりを十二分に発揮していた。

この Jan Hammer、Narada Michael Walden に加えて、プロデューサーに George Martin、キーボードに盟友 Max Middleton というラインアップは実質この『Wired』の一枚だけで終わり、相変わらず Jeff Beck の移り気の早さに、また、もう一枚同じラインアップでアルバムが聴きたいという思いにさせられた。

Wired
Led Boots
Come Dancing
Goodbye Pork Pie Hat
Head For Backstage Pass
Blue Wind
Sophie
Play With Me
Love Is Green

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