Joss Stone／『Colour Me Free!』

この Joss Stone の3rdアルバム『Colour Me Free!』は当初、2009年春にリリース予定だったが、所属するレーベルの EMI とジャケットやプロモーションの方法を巡って対立。リリースは秋にずれ込み、その結果 Joss は EMI を離れ、自身のレーベル Stone'd Records を立ち上げるきっっかけにもなった。

「ある朝、起きてアルバムを作りたいと思い、たくさんのミューシャンとライターを交えてジャム・セッションのように作った」と後に Joss は、このアルバムの制作当時の状況を振り返っている。

アルバムの多くを母 Wendy Joseph が持つスタジオで1週間ほどでレコーディングしたと言われる『Colour Me Free!』は多くのゲストが招かれ、3曲目の『Parallel Lines』には Jeff Beck や Sheila E. が、6曲目の『Big Ol' Game』では前作『Introducing... Joss Stone』でアルバムのプロデュースを務めた Raphael Saadiq の名前もあった。

『Colour Me Free!』の前半にある曲は、1990年代の終盤、イギリスで活躍した Conner Reeves との共作曲が並び、その中でも『Lady』と『4 And 20』はアルバム前半のハイライトで、特にピアノとストリングスをバックに歌う『4 And 20』はジャズの雰囲気がたっぷり。レコーディングがジャム・セッションのようだったという Joss の言葉を裏付けるような曲だった。

Raphael Saadiq との共作『Big Ol' Game』を挟み、アルバムの後半にはラッパーの Nas をフューチャーした『Governmentalist』が登場。Joss と Nas の共演には「?」も浮かんだが、これも当時の Joss がやりたかったことの1つだったのだろう。

『Colour Me Free!』の後半は他のバンドやアーティストの書いた曲が続く。『You Got The Love』のオリジナルは1986年に The Source が Candi Staton をフューチャーしてシングル・カットした曲。『I Believe It To My Soul』は Ray Charles が書いた曲で、ここではドラムに Steve Gadd、サックスに David Sanborn が参加し、プロデュースは Phil Ramone が務めていた。

続く『Stalemate』は再び EMI との対立が表に出た曲で、ライターにある Jamie Hartman が属する Ben's Brother のアルバム『Battling Giants』にも収録されたが、シングル・カットの際に EMI が Joss のボーカルを使うことを許可せず、その代役に Anastacia が起用されリリースされた。

この3曲では、まさにアルバムのタイトルのように、Joss のボーカルをメインに様々なかたちに曲が彩られ、アルバム後半になるに連れ、また盛り上がりを見せていく。

ジャケットでとりあえずアルバム最後の曲となっている『Girlfriend On Demand』では、それまでの多くのゲストを招いての曲から一転、ピアノとオーケストラをバックに Joss の自在に変化するボーカルが聴ける。ここで一旦、『Colour Me Free!』は終わる。

3分あまりの無音部分に続いて始まるシークレット・トラックの『Mr. Wankerman』は13分にも及び、ジャム・セッションのようだったというレコーディングの雰囲気がたっぷり聴ける。まるで『Colour Me Free!』というライブのアンコールを楽しんでいるような雰囲気の曲だ。

ジャズやソウルのスタイルに Joss の低音のボーカルがハマり、それでいて Naz のような現在のヒップ・ホップと絡む曲もある、「自由に私を染めて!」というタイトルの Joss の3rdアルバム。これもまた、リリースからかなり遅れて聴いたが、とてもいい内容の好きなアルバムになった。

Colour Me Free!
Free Me
Could Have Been You
Parallel Lines
Lady
4 And 20
Big Ol' Game
Govermentalist
Incredible
You Got The Love
I Believe It To My Soul
Stalemate
Girlfriend On Demand
【hidden track】
Mr Wankerman

タグ：Joss Stone 2009