Jeff Beck／『Who Else!』

Jeff Beck のスタジオ・アルバムで初めてリアル・タイムに手に入れたのが、この1999年リリースの『Who Else!』だったと思う。

これ以前に『Crazy Legs』というアルバムを手に入れていたが、こちらは純粋なオリジナル・アルバムではないカバー・アルバムだったし、また1991年には3枚組『Beckology』を手に入れたが、こちらもコンピレーション・アルバムなので、純粋なスタジオ・アルバムの新作としては、やはりこの『Who Else!』が初めてだったと思う。

『Who Else!』はスタジオ・アルバムとして1989年の『Guitar Shop』以来の10年ぶりの新作フル・アルバムだった。冒頭の2曲、『What Mama Said』と『Psycho Sam』でいきなり驚かされ、3曲目のライブ録音 (?) な雰囲気の『Brush With The Blues』では、その2曲とガラリと変わったスローな展開にグッと引きこまれてしまった。

多少のボーカル要素はあるが、基本『Who Else!』はインストゥルメンタル曲で構成されたアルバムで、10曲目の『Declan』が Donal Lunny というアイルランド出身のアーティストによる曲以外は、その多くがこのアルバムでキーボードを弾く Tony Hymas が書いた曲だった。Jeff は『What Mama Said』『Brush With The Blues』『Hip-Notica』の3曲で Tony と共にライターに記されていた。

キーボードの Tony が書いた曲が多いことから『Who Else!』というアルバムは Jeff のギター・プレイはもちろんあるが、エレクトロな雰囲気の濃いアルバムになっていて、この傾向は2001年の『You Had It Coming』、2003年の『Jeff』と続いた。

10年もの間、スタジオ・アルバムがなかったのに、2年おきに新作をリリースし、この頃に50代に突入したものの創作意欲が全く衰えていないことを、この3枚のスタジオ・アルバムでは実証しているようだった。(だが、2003年の『Jeff』以降、パタっと新作が途絶えてしまったのは、反対に創作意欲が減退してしまったことの表れだった…?)

キーボードの Tony が書いた曲だが、6曲目の『Angel (Footsteps)』で聴ける Jeff のギターは、この『Who Else!』というアルバムのハイライトのひとつで、2000年代にリリースした3枚のライブ盤でもこの曲は必ず聴けた。『Angel (Footsteps)』はこの頃の Jeff を代表する曲のひとつだった。

『What Mama Said』には Michael Jackson のアルバムに参加し、ワールド・ツアーにも同行した女性ギタリスト Jennifer Batten が参加していた。『What Mama Said』に代表されるような曲と、『Angel (Footsteps)』や『Declan』で聴ける、かつての Jeff を思い起こさせるプレイは、この『Who Else!』というアルバムの面白さでもあった。

『Who Else!』に参加したキーボーディストは Tony の他に、1970年代後半に活動を共にした Jan Hammer の名前もあり、9曲目の『Even Odds』は Jan が書いた曲。ここではキーボードはもちろん Jan が弾き、ドラムも Jan が叩いていた。

アルバム・ジャケットは椅子に座ってギターを弾く Jeff の姿と、まるでこの頃に活躍していた、もうひとりの Beck と区別するかのように手書きの Jeff という文字を BECK というゴシック文字に添えたシンプルな白黒のモノトーンだった。これでアルバムのタイトルが『Who Else!』。「Beck と言えば Jeff Beck のことだろ!」と、宣言しているようなアルバムだった。

Who Else!
What Mama Said
Psycho Sam
Brush With The Blues
Blast From The East
Space For The Papa
Angel (Footsteps)
THX138
Hip-Notica
Even Odds
Declan
Another Place

タグ：Jeff Beck 1999