U2／『All That You Can't Leave Behind』

U2 が2000年代に入って初めてリリースしたスタジオ・アルバムの『All That You Can't Leave Behind』は、1990年代にリリースした『Achtung Baby』『Zooropa』『Pop』という通称「電脳三部作」の後にリリースされ、U2 が原点に回帰したアルバムとも呼ばれた。

プロデューサーには『Achtung Baby』以来となる Daniel Lanois と Brian Eno のふたりが復帰し、デビュー盤『BOY』からの3枚でプロデューサーを務めた Steve Lillywhite も『Beautiful Day』と『Walk On』の2曲で、それぞれの曲のプロデュースとミックスを担当と、『All That You Can't Leave Behind』は1980年代にリリースされたアルバムに近い雰囲気を持っていた。

原点回帰したアルバムと言われる『All That You Can't Leave Behind』だが、1990年代のアルバムで得た技術も使われ、『Beautiful Day』でのドラムやコーラスにはビート・ボックスが、『New York』では Larry Mullen, Jr が叩いたドラムの音を Lanois と Eno がドラム・ループにして使ったという。

U2 は前作『Pop』で PopMart Tour の事情から期限を決めてレコーディングを行なったが、それがアルバムの制作を急がせることになってしまったという反省から、この『All That You Can't Leave Behind』のレコーディングでは完成への期限を設けずにレコーディングを行なったという。

その甲斐もあって『All That You Can't Leave Behind』には、結果としてアルバムの冒頭に、4曲のヒット・シングルが並ぶことになり、そのいずれもが大きなヒットを記録した。

リード・シングルの『Beautiful Day』は全英チャートで1997年の『Discothèque』以来となる全英チャートで4曲目の No.1 を記録し、アメリカではゴールド・ディスク (50万枚) を、イギリスではシルバー・ディスク (20万枚) のセールスも上げ、アルバム『All That You Can't Leave Behind』のセールスを強力に後押しした。

2曲目のシングルに選ばれた『Stuck In A Moment You Can't Get Out Of』は、Bono が1997年に自らの命を断った友人の INXS のボーカル Michael Hutchence を思い書いた曲で、これも全英チャートで最高2位をマーク。

続く『Elevation』は2001年の夏に公開されたゲーム・シリーズ『Tomb Raider』の映画版『Lara Croft: Tomb Raider』のサウンドトラック盤に Tomb Raider Mix として提供され、これも全英チャートでは最高3位を記録。

そして、最後のシングルとして2001年暮れにカットされた『Walk On』は、ミャンマーで当時軟禁状態にあった Aung San Suu Kyi (アウンサンスーチー) に捧げた曲で、これも全英チャートで最高5位を記録と、『All That You Can't Leave Behind』からのシングルは全て全英チャートで Top5 入りを果たした。

だが、『Walk On』の影響から、ミャンマーではこの『All That You Can't Leave Behind』は発売禁止の処分も受けた。

どれも甲乙つけ難いシングルを4枚も含む『All That You Can't Leave Behind』は、2001年と2002年の Grammy 賞で7部門で栄誉にも輝いた。まず、2001年の Grammy 賞では『Beautiful Day』が Song of the Year、Best Rock Performance by a Duo or Group with Vocal、Record of the Year の3冠を受賞。

そして2002年には『Walk On』で2年連続 Record of the Year を獲得。『Elevation』では Best Rock Performance by a Duo or Group with Vocal を、『Stuck In A Moment You Can't Get Out Of』では Best Pop Performance by a Duo or Group with Vocal を獲得。そしてアルバムとして『All That You Can't Leave Behind』が、Best Rock Album に選ばれた。

2年続けて同じアルバムから2曲の Record of the Year を輩出したのは、長い Grammy 賞の歴史上でも、この U2 の『All That You Can't Leave Behind』しかないという。

『Rolling Stone 』誌は『All That You Can't Leave Behind』を『The Joshua Tree』『Achtung Baby』と並ぶ U2 を代表する傑作3枚のアルバムに挙げ、2009年には2000年代を代表するアルバムの第13位に選出。シングル『Beautiful Day』は同じく同誌の2000年代を代表する曲の第9位に選んでいる。

All That You Can't Leave Behind
Beautiful Day
Stuck In A Moment You Can't Get Out Of
Elevation
Walk On
Kite
In A Little While
Wild Honey
Peace On Earth
When I Look At The World
New York
Grace

タグ：U2 2000