David Bowie／『'hours...'』

俗に「大物」と呼ばれるバンドやアーティストのアルバムが、どんどん長い間隔を空いてリリースされる中、David Bowie の1990年代は Tin Machine 名義のアルバムを含め、きのう紹介した『Earthling』や、今回取り上げる『'hours...'』などが2年おきにリリースされた。

ソロ名義での復帰作『Black Tie White Noise』から『'hours...'』までの Bowie が1990年代にリリースした4枚のアルバムは個人的にどれも好きなアルバムだ。(1995年の『Outside』だけは、そう頻繁に聴きたいアルバムではないが…)

前作『Earthling』を超アグレッシブなアルバムと昨日記したが、この『'hours...'』で、その流れを感じる曲は『The Pretty Things Are Going To Hell』の1曲だけ。それ以外の9曲は、ゆったりとしたテンポの曲が多く並ぶアルバムだった。

初回版のジャケットは 3D レンチキュラーという斜めに傾けて見るとジャケットに写る Bowie の姿が変化して見える特殊仕様。1999年以降のリイシュー盤では普通の画像に統一されてしまったが、1999年のオリジナル盤は面白いジャケットだった。

イギリスではシルバー・ディスクに認定され、チャートでも最高5位を記録し、それなりの結果を残した『'hours...'』だったが、このアルバムもまた今は廃盤の憂き目にあり、中古ショップでは格安の棚に並ぶ一枚と、不当な扱いを受けているアルバムになってしまった。

一見、オリジナルのスタジオ・アルバムに見える『'hours...'』は、ビデオ・ゲーム『Omikron: The Nomad Soul』のサウンドトラック盤に提供した曲が多く含まれ、またアルバム唯一のロックな曲『The Pretty Things Are Going To Hell』は1999年秋に公開された映画『Stigmata (邦題:スティグマータ 聖痕)』のサウンドトラック盤に提供された曲だった。

アルバム半分近くの曲が『Omikron: The Nomad Soul』や、映画に提供した曲という事実がまた、この『'hours...'』を曖昧な位置づけにしているように見えるが、このアルバムを最初に聴いたときは、そんな背景を知らず、純粋に Bowie のスローなボーカルが心地いいと感じるアルバムだった。

『'hours...'』の終盤、『Brilliant Adventure』というインストルメンタル曲が登場するが、この曲は1977年のアルバム『"Heroes"』収録の『Moss Garden』の再録 (?) のようで、なぜ、こういうかたちで『'hours...'』に取り上げられたのか、未だに不思議な曲だ。

ちなみに『"Heroes"』収録の『Moss Garden』と『'hours...'』にある『Brilliant Adventure』は、ともに2001年にリリースされた Bowie のインストルメンタル曲だけを集めたコンピレーション・アルバム『All Saints』に収録されている。

『'hours...'』も2005年に2枚組の拡張版がリイシューされ、そこには『Omikron: The Nomad Soul』で使われたテイクの『Thursday's Child』や『New Angels Of Promise』『The Dreamers』も収録され、『The Pretty Things Are Going To Hell』の映画『Stigmata』で使用されたテイクも収められている。

この2枚組には『'hours...'』からのシングルB面に収録された別ミックスもあるが、この拡張版もまた、今では入手が難しい状況にある。

'hours...'
Thursday's Child
Something In The Air
Survive
If I'm Dreaming My Life
Seven
What's Really Happening?
The Pretty Things Are Going To Hell
New Angels Of Promise
Brilliant Adventure
The Dreamers

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