Ana Popović／『Blind For Love』

ドイツ系のレーベル Ruf Records を離れ、2006年にアメリカの西海岸にある Delta Groove Music 系の EclectoGroove Records と新たな契約を交わした Ana Popović が、『Still Making History』に続いて2009年にリリースした通算4枚目のスタジオ・アルバムが、Ana が11曲を書き下ろした、この『Blind For Love』だった。

Dion Murdock 作の『Need Your Love』以外は全て Ana が曲作りにクレジットされ、作詞の面でも5曲目の『More Real』を除き、非英語圏である、かつてのユーゴスラビアのベオグラード出身の Ana が共作を含め、残る11曲の全てに関わっているアルバムだった。

『Still Making History』で Ana の存在を知ったが、その後、リリースされた『Blind For Love』も初期の他のアルバムと同じく、長いこと手に入れることが難しいアルバムだった。

それをようやく Ruf Records 時代のアルバムと共に手に入れ、1曲目の『Nothing Personal』から最後の『Blues For M』まで聴いてみた。その感想は、初期のギターを弾きまくっていた頃に比べ、ジャズなどのスタイルにも積極的に挑んでいる雰囲気のアルバムだった。

これまでは Ana のギターとボーカルに、ベースとドラムを加えた3ピース構成が基本だったが、この『Blind For Love』ではキーボードもそこに加わり、1曲目の『Nothing Personal』を含む4曲ではトランペットやサックスのホーン・セクションも参加。そして3人のバック・ボーカルがほとんどの曲で入り、初期のシンプルな構成に比べると、かなり分厚いサウンドに変化していた。

だが、それでいて最後の曲以外は、ほぼすべてが3分台にまとめられているので、ジャム・セッション風に長く続く曲もなく、全12曲ながら、アルバム全体で45分弱という長さで、とても聴きやすいアルバムになっていた。

3曲目の『Steal Me Away』ではアコースティックな編成でのブルースを聴かせ、続くタイトル曲の『Blind For Love』ではこれまでのアルバムでも時折見せてきたジャズっぽいアレンジでまとめていたりと、女性ながらも豪快にギターをグイグイと弾いてきたイメージを覆す曲がアルバムの序盤にあった。

『Blind For Love』ではシットリ歌い上げる Ana のボーカル・ワークも聴きどころ。今回のアルバムのジャケットは敢えてギターを見せず、ポートレート風な画像だったが、それが似合うタイトル曲だった。

Ana の囁くようなボーカルの『More Real』を挟んで続く『Putting Out The APB』は、このアルバムでお気に入りな曲のひとつ。2曲続けたスローな曲に対して、イントロから Ana の弾くギターで始まる『Putting Out The APB』は女性コーラスも賑やかな軽快なテンポの曲で、ライブでプレイされるのが楽しそうな雰囲気の曲だ。

ここまでの前半6曲に面白い曲が続けざま登場するのに対して、後半6曲は Ana のボーカルに比重を置いた感じの曲が多く、個人的には少し失速気味にも感じられた。

Ana のようにギターも弾くアーティストではないが、ソウルフルなボーカルを聴かせる Joss Stone がお気に入りであれば、この Ana もお気に召すのではないだろうか。天は二物を与えずと言うが、Ana にはギターのプレイに加え、ソウルフルなボーカリストとしての才能もあると改めて感じたアルバムだった。

Blind For Love
Nothing Personal
Wrong Woman
Steal Me Away
Blind For Love
More Real
Putting Out The APB
Get Back Home To You
The Only Reason
Part Of Me (Lullaby For Luuk)
Lives That Don't Exist
Need Your Love
Blues For M

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